2018年5月7日月曜日

平成30年5月のあれこれ

 「ミルフィーユ、ミルフイユ、ミルフォイユ」と呼び方は様々ですが、思い浮かべるその形と質感はこのお菓子のイデア(本質、原型)でしょうか。あのサクサクと乾いた歯触りとトロ~リ潤った舌触りが、耽美的な快楽をもたらします。作り込まれたその姿はあくまで端正なのですが、食べる時にはグシャグシャに崩れがち。建前と本音みたいな、その二面性が愛しい。
 
その1

パティスリーエス・サロン 075-223-3111 水木休

 サロンに三回目の来店にして、やっとこさのアシェットデセールです。三種類の中から選ぶのなら、やっぱりコレ、シャンパーニュのミルフィーユ、¥1,480。パイ生地は以前、エスで出されていた(持ち帰り可の)ものに比べると固さは控え目な気がしますが、それでもしっかり焼き締められていて、ザクっとした感触が心地よい。
 カスタード?クリームは、存在感はあるのにキレが良い。しばらくすると、噛むたびにシャンパンの香りが口の中でシャボン玉のように弾けます。うわ~、ここまでくると非日常を超えて、脳内が桃源郷に到達してます。

 よって、こちらは京都における酒香菓子の総本山、と勝手に認定。喜ばしい事に、これからミルフィーユに力を入れていくとの事。そこで差し出がましいのですが、それ用にわたくし愛用のナイフ&フォークのブランドを紹介いたしました。比較的ミルフィーユが食べ易いんでね。それに洗練された質感がエスに相応しいと思いまして。

その2

ロトス洋菓子店 075-353-2050 月火休

 上)ミルフィーユ、¥480。見た目は骨董の器に相応しい。古典の作り方がどーゆーモノかは知りませんが、そこに忠実なんじゃないかなと、何となく。
 とは言え、味わいは名作の写しの様な普遍性を保持しつつ、現代的なキレが冴えわたります。バター好きにはたまらない生地の香り。




 下)ミルフィーユ・ショコラ、¥560。今回の企画に合わせて、久しぶりに購入しました。チョコクリーム?には、ビーントゥバー的な果実味がきらめいています。ここではチョコのパイ生地は、主にサクサク感を担当して控え目な印象です。
 食感の変化が楽しめる分、タブレットのチョコよりもご馳走感を感じます。







その3

ル・ソレイユ 075-525-1105 不定休

 ミルフォイユ、¥550?パイ生地の繊細さは随一です。食後にあれは幻だったのではと感慨に浸ってしまいます。

 おそらく、シャンティ(白いやつ、生クリームを泡立てたもの)はイートイン限定だと思われます。よって、二度おいしい的な楽しみ方ができます。
 カスタードクリームは比較的さっぱりしていたので、シャンティと一緒にしてもしつこくありません。それにクリームもシャンティも空気を多く含んだように軽やか。だから、メガデスの「HANGER 18」におけるツインギターのハーモニーみたい?に、相乗効果で魅力が増しています。 

 ちなみに横置きは、比較的崩れにくいです。祇園でご馳走、の後にはここでシメです。



その4

アグレアーブル 075-203-9005 不定休

 ミルフィーユ、¥480。ギュっと締まっているいるように見えますが、軽やかに重なっていて軽快な歯触りのパイ生地です。

 濃厚...と感じた瞬間に、過ぎ去ってゆく味わい。ぽってりとした質感のカスタードクリームは、甘みもバニラの存在感も確かにあるのですが、フワリとスローモーションで後ろ姿を見送る。
 感動といえば言葉足らず、一種の名残惜しさを残します。情緒に訴えかけるお菓子って、もはや芸術なんでしょうね。









その5

パティスリーエス 075-361-5521 水木休

 現在は土日限定のミルフィーユ、¥630+税。飲むのではなく香りが好きなシングルモルト、マッカランの芳香。

 見た目の特徴として、パイ生地が薄くクリームが厚い。しかしながら、味わいとしては調和が保たれています。以前のミルフィーユほどではないと思いますが、ザクザクと固めのパイ生地にキャラメリゼのほろ苦み。濃厚と香しさを兼ね備えたバタークリーム。さすがの独自路線です。

 余談。やはりお店の方は狐菴の店主のことをご存じでした。マダムと「(狐菴に)行きたいね~」と話されていたそうです。






その6

ドルチェパンダhttps://www.instagram.com/dolce_panda_kyoto/?hl=ja 075-468-9590 不定休

 ここで変化球です。パフェ様式?苺のミルフィーユ、dolce panda風。保守的な人はこの見た目から拒絶するかもしれませんが、口中に現象する味は名前に偽りなしです。

 パイ生地はミニクラッカーみたいでサクサク感が独特です。軽さの質が未体験でして、大きさや形が印象を左右するのでしょうか。通常カスタードクリームが担当するこっくり感は、中心部に隠れたピスタチオのムースリーヌが醸し出します。とは言え、全体的にサッパリした味わいです。コース料理の最後にも相応しいような味と見た目のデザートです。

 後半は前回のパフェ同様に底から混ぜてみました。やむを得ずではなく、意思を持ってグシャグシャにしたということです。

 あ~前回、言い忘れてた事がありました。初めての来店時、ふとBGMが気になりました。「これ高鈴ですか?」こちらの店主は、ボーカルの方といっしょに働いていたことがあるそうです。高鈴ファンの方も訪れてはいかかでしょうか。
 ということで、このお店のイメージソングは、高鈴「僕の町までいかないか」です。愛しさがギターをつま弾かせて、そこにはこんな素敵なカフェがあるんだ、ってなもんで。




オ・グルニエ・ドール サロンドテ 水休

 この特集のシメは苺のミルフィーユでと思ったのですが、どうやら時期が過ぎてしまったようです。ミルフィーユという食べ物を始めて体験したのは、たぶんココです。以来、わたくしの中でこのお菓子が意識の中に常にある部分を占める事となりました。

 オグルニエドールの思い出。オープン当初は休日の昼下がりに、ショウケースに続く通路沿いの席で、これまでとは次元の異なるお菓子と共にのんびりお茶していました。今にして思えば、洋菓子に執着するきっかけはこのお店でした。月に二、三回通っていたせいか、「パティシエなんですか?」と聞かれたこともありましたっけ。今では他にも好きな洋菓子店がいっぱいあります。でも、たまにグルニエドールのお菓子を味わうと、やっぱり素晴らしいと感動します。わたくしの経験値は大幅に上がっているにもかかわらずです。以前にも申し上げましたが、普遍に達するとはこーゆー事なんでしょう。

 五月いっぱいの閉店まであと少し。名残惜しさを感じつつ、できればイートインで他のお菓子を堪能したいな。最後に大好きな店との別れに相応しい曲は、オジーオズボーンの「Goodbye to Romance」美しい旋律にのせた、前向きな別れの歌。


 それにしてもミルフィーユって骨董の器が似合うな。それと誰かミルフィーユ専門店やりませんかね。